「あれ?目が見える。あれ?あたし喋ってる」

室内をあちこち眺めていると、薫が抱き着いて来た。

「絵美ちゃん!表情も戻ってるわ!よかった!よかったね!」

目を潤ませたまましきりに絵美の体を撫でながら抱きしめ続ける。
ケイは向かい側の席に座り直した。

「産まれて来てくれてありがとう」

しっかりと絵美の目を見て言った。

「父上」
そう言ってから自分の台詞に首を傾げる絵美。

「父上?」

自分の台詞を復唱する。

「人間の記憶と、天使の自分と、混ざってるんだろう」

そう言って微笑むケイ。

「生まれて来た子供に名前を付けてやらないとな」

そう言うケイに二人は首を振る。

「あたしの名前は絵美だもん」

言い張る絵美に、そうだなと微笑むケイ。