「あっ、お前空飛べるか?」
フルフルと首を振る絵美。
「目は見えてるんだろう?見えてない?じゃあ会話は?会話も出来ないのか?耳は聞こえてるんだろう?」
最後の質問にだけ縦に首を振る絵美に尚も質問する。
「羽根が生えてからどのくらい時間が過ぎた?」
『誕生日が二月だから…半年くらい?』
絵美の返事にがっくりとうなだれ、床に膝をついた。
「そんなに…。じゃあもうミアに会えないじゃないか…」
ベッドに両肘をつき両手で顔を覆う。小さく震える体が涙を流すケイの表情を容易に想像させる。
「何のために今日まで待ち続けたんだ…会えると信じて今日まで来たのに…子供も産まれずに俺はどうしたら…」
ベッドに顔を突っ伏して体重を預ける。そんなケイの頭をポフポフと叩く絵美。
『会う約束してたの?』
「あぁ…でもきっともう消えてる…」
『約束してたんでしょ?何で信じてあげないの?』
ピクっとケイの頭が動いた。
『あたしは信じてるよ。彼氏が必ず会いに来てくれるって。ずっと信じてるよ?
いつ会えるかわかんない。約束もしてない。でも信じてる。
ケイは約束したんでしょ?必ず会うって約束したんでしょ?
駄目かどうかもわからないのにミアを信じないで約束破るの?』
絵美の声を聞き取れ無い薫は一人で喋るケイに何をしてあげられるのかわからずただ眺めていた。
「そうだな…産まれてもいない子供に諭されるなんて、俺もただ生きてきただけだったんだな」
立ち上がって薫に向き直す。
「時間をもらえますか?この子が生まれるまでの経緯、何故天使が生まれるようになったのか、すべてお話します」