フッと、力を抜いた薫の表情に笑みが戻る。

「叩いたりしてごめんなさいね。でも、半端な気持ちじゃ最後まで貫き通すことは出来ないと思うわ。本当に大丈夫?」

「…はい。もう迷いはないです」


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「えっ?!絵美が喋れないんですか?!」

隣街の寂れた喫茶店とは言え、天使を怪訝な目で見、同席している隆彦でさえ、遠巻きに哀れむ目を寄せる店内の客。
しかし、絵美を助けてあげたい薫も、絵美のために何かしてあげたい隆彦も、周りの目を気にすることはない。

「表情も作ることが出来ないみたいで、目も見えない。口だけじゃなく、なにもかもが沈黙してる。解るのは触れるものと音だけ。」

「そんなこと…」

「隆彦っ!お前は天使なんかと話しやがって何やってるんだ!」

「親父…!」


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