「俺…絵美が大事なんです。
すごく大事で、手放したくなくて居ます。

絵美が俺のことを嫌いになったとしても、陰から、いや、嫌がられても正面から助けてやりたいんです。
だから、絵美が沈黙の天使なら、その情報を少しでも欲しいんです」

不安げながらもしっかりと薫の目を見て話始める隆彦に彼女もまた問い掛ける。

「自分が天使だというだけで蔑まれ、羽根が生えているというだけで人間じゃないと罵られ、友達が出来ても自分が天使だからという理由で自然と嫌われてゆく。

そんな彼女を守っていくと言うの?しかも、末裔である沈黙の天使の彼女を!?

今まで以上に過酷な生活を送るかもしれない。
今よりも楽な生活になることはまずないのよ?それでも彼女の傍に居られるの?」

「はい!何があっても絵美から離れません!」
『パァァン!』

リビングに響く平手打ちの音。

「じゃあ、何故病院であんな表情を見せたの?
何故あんな言葉を吐き捨てて出て行ったの?!

貴方だって見た目だけで彼女を非難したじゃない!
それでのうのうと彼女を助けたい?
半端な気持ちで、珍し物好きの感覚で言ってるだけなら今すぐ帰りなさい!」

喉が枯れるほどの大きな声を張り上げ、若干肩で息をする薫は、怒りの中に沢山の悲しみを含んだ表情で隆彦を見つめ続ける。

一瞬戸惑いを見せたもののしっかりとした表情で薫を見つめ返す隆彦。

「もう二度と絵美を傷つけることはしません!もう二度と彼女を裏切りません!」

逸らす事なく薫の目をじっと見つめる。一点の狂いもなく、しっかりと。