「ゆ」

「め」

「を」

「み」

「た」

「夢?」

そして『てんしとあくま』と続けた。

「なんだそりゃ」

どんな内容の?と続けて聞こうとした時、下から軽く音を立てて薫が階段を駆け登って来た。

「隆彦くん、お父さんが…!」

薫の言葉を遮るかのように家のインターホンが何度も響き渡る。
それに続いて玄関のドアを叩く鈍い音。

急いで駆け降りた薫がドアのキーチェーンを掛けて鍵を開ける。
勢いよく引いたドアはチェーンのおかげで、数センチしか開かない。

「オイ!ここに隆彦が来てるんだろう!?返しやがれ糞天使!」

ドスの効いた低い声が響き渡る。
何度も罵声を飛ばし、薫は怯え、絵美はボードを抱きしめうずくまる。隆彦はその言葉から沸き上がる怒りに堪えていた。

「てめぇら天使は唯の化けもんじゃねえか!」

「適当なことぬかしてんじゃねえよ!」

隆彦が吠えた。
びくついた絵美の頭を軽く抱きしめる。

「絶対また来るから。俺はお前を忘れない。絶対にだ」

絵美の額に口づけして階段を降りて行った。