「女ってのは、飾りなんだよ…!」

吐き捨てると同時に立ち上がり、余りの言葉に歪んだ表情を見せる絵美に向かって手を差し延べた。

「おら、立てよ」

訳も解らず手を出して立ち上がった絵美をきつくきつく抱きしめた。
その力とは裏腹に、優しく彼女の髪を撫でる。丹念に。

「だから…忘れろ。俺はお前のことが大嫌いだ。だからお前のことをずっと忘れない。
だけど、お前は忘れろ。
俺のことを嫌いになって忘れろっ。忘れろよっ!」

そう言って痛いほどのキスを何度もする。

息がはっきりと白く見えるほど火照った体温。絵美の頬を流れる一筋の涙。
呼吸の荒くなった体を休めるように、絵美の額に自分の額を乗せる。

「なんでだよっ。何でお前なんだよ!」

絵美から体を離し、有り余る力で木の幹を何度も蹴る。
渇いた音を立てて枯れ葉が何枚も落ちて来た。

「別れるぞ!別れるからな!畜生!」


『そうか、こうゆうことか。世間が認めないんだね。世界が天使を拒絶してるんだ。
今までの天使はこれに皆堪えて来たんだ。だけどあたしは堪えられない。』


――あたしは生きていけない。


‡‡‡‡‡‡