あなたとワタシ



六本木に建つこの歓楽街には似つかないオーラを放つこの店。
culab『クィーン』その名の通りこの業界で日本一を誇る高松グループの店だ。

俺はこの店の常連で、良く利用している。
店の前に車を止めると、中からボーイが出てきた。

「いらっしゃいませ。東宮様。お待ちしておりました。お車お預かりします。」

「あぁ。頼む。」

車をボーイに任せ、俺は店内に入った。
入ってすぐのカウンターに行く。


「いらっしゃいませ。東宮様。今日のご指名はどうなさいますか?」

「百合香を。」

「かしこまりました。お席にご案内いたします。」

百合香はここのナンバー1だ。
百合香なら会社のこと知ってるかもと思って指名した。ここは永久指名じゃないので誰を指名してもかまわない。

そういえば百合香を指名するのは久しぶりだな。
そう思っていると


「こんばんは。お久しぶりです。東宮様。」

「おう。元気だったか?百合香。」

「はい。最近ぜんぜん指名してくれないんだもん。ちょっと怒ってるんですからね!」

「ごめんごめん。色々急がしくてさ。」

「良いですよ。今日会えたから。」

「で専務?私に聞きたいことがあるんじゃないの?」

「なんで分かった?」

「専務が私を指名するときはなにか情報が欲しいからでしょ。」

百合香が言った通り百合香はこの店で結構長い間ナンバー1だ。六本木にある会社の接待は大抵ここである。だからここに来て百合香に聞けば大体その会社について分かる。


「さっしが良いじゃん。」

「でしょう?クィーンのナンバー1を見くびらないでもらえるかしら。」

「すまんすまん。」

「でどこ?」

「お前の会社だよ。」

「へ?うち?ってことは高松グループってこと?」

「あぁ。なにか知ってるか?」

「まあ大体のことは。一応社員登録みたいだし。」

「そうなのか?」

「うん。ある一定の期間働いている子達は大体社員よ。」

「そうなんだ。」

「じゃあ知ってること教えてくれよ。特に重役な。」

「高松の重役は3人。社長の高松咲桜・社長代理の高松恭輔・そして専務の高橋柚。それぐらいかな?」

やっぱりか。
「社長について何か知らないか?顔すら分からないんだ。」

「社長の顔は私達でさえ知らないけどホステス日本一を10年連続でとってるからすごい美人だといわれてるわ。」

「そっかわかった。ありがとう。」

これ以上情報は得られないな。
そう思い席を立つと

「もうお帰りですか?」
さすがだな。
高松グループがなぜトップなのか、改めて実感する。

美人なことはもちろんだがホステスの質はピカイチだ。
おじいさんもいい会社に目をつけたな。

「あぁ。また来るよ。」


そう思いながらクラブをあとにした。