「すごい…。めっちゃ綺麗。
こんな綺麗な夜景初めて見た。
こんな場所あったなんて全然
知らんかった…」
「ここ、俺の1番好きな場所。
…何て言ったらいいか分からんけど
ここのすぐ下に林があるの分かる?
夜だと真っ暗な穴に見えるんやけど」
彼が指差した方を見ると、
確かに真っ暗でぽっかりと穴が
空いているように見える。
「この穴を飛び越えた先に
街があってさ。まるでこっちと
あっちじゃ世界が違うみたいな、
そんな不思議な気持ちになる」
彼は街の明かりを見つめて、
眩しそうに目を細める。
…何となく分かる気がする。
街が現実の世界だとしたら、ここは
現実であって現実ではない場所。
時間の流れさえも存在しないような
そんな感覚になる場所。
夜という時間が、この場所を
日常から切り離しているのだ。
どこか遠くへ行きたいという気持ちが
そうさせているのかもしれない。
