慌てて携帯を取り出し、
画面に表示された名前を見て、
ボタンを押すのを躊躇う。


――いい加減前に進もうよ。


優の言葉が頭の中でこだまする。


そうしている内に音楽は止まり、
不在着信を知らせる画面が表示される。

携帯を握りしめ、
自転車に寄り掛かり、
目を閉じる。


――どうしたら前に進めるの?
誰か教えてよ…


怒りのような悲しみのような
説明の出来ない感情が込み上げ、
押し潰されそうになる。


苦しいよ。誰か助けて。


その時、かすかにあの音が聞こえた。