背中を丸くしてシーツにくるまり眠る沙耶の頬には、痛々しく乾いた幾筋もの涙の後。

――後に残るは苦い罪悪感。

 俺はそれを見ないように、日が昇るのを待たずに部屋を出た。この気持ちの名前に俺はとっくに気づいている。でも今は向き合う勇気をどこにも持ち合わせていなかった。

『翔梧は本気で人を好きになったことがないのよ』

 あの言葉が今更胸に突き刺さる。ソレが、こんなにも重く、そのことを知らない自分がこんなにも罪深いなんて知らなかったし、こんなことなら、まだ知りたくはなかった。

 振り向かず、立ち止まることなく。俺は出来るだけ遠くへとこの感情から逃げ出した。