彼には彼女が。
 若さが。
 蠱惑的なココロとカラダがある。
 
 年の差があるせいだけじゃない。
 そもそも私なんかが手に入れられる相手じゃなかったんだから。

――そう、ずっと分かっていた。だから、気をつけていたはずなのに…。

「沙耶ちゃん?」

 くっきりとした綺麗な形の眉を寄せ、心配そうに私を覗き込む山内さんから甘い匂いがする。

 きっと今、私からも同じ匂いがするはず。
  
 切ない恋の香りが……。