「大丈夫。それに私、そんなに純粋じゃないから」

 安心させるように冗談混じりに答える。

――本気にならないように。

 翔梧に出会ってから、私はその事に細心を払っていた。
四年ぶりの恋愛をする相手としては、翔梧は上等すぎたから。信じすぎないように。愛し過ぎないように。いつ翔梧が私に飽きて去って行くかわからないのだから。そんな漠然とした不安から警戒心を持って付き合っているつもりだった。

 実貴との電話を切って、少し放心したまま携帯を見つめていると震える携帯。メール着信音が鳴る。

〈件名:いー天気
本文:何してる?こんな日は一日沙耶とゴロゴロして〜。授業ダルいよ。眠〜。〉

 のんきなメールに力が抜ける。胸に広がる甘く苦い気持ち。私はソレから目を逸らす。今はまだその気持ちの名前を知りたくはなかったから。