誰を傷つけることになっても、手離したくない。目の前の濡れた大きなカラダを抱き締める。

「こんな気持ちになるのは、翔梧だけ」

 戸惑うくらいにいつも胸がきゅうと痛くなる。誤解しないで傷つかないで

「私を信じて。そうじゃないと、私……」

 言葉にしようとすればするほど、どうしたらいいかわからない、次々に溢れる想い。正直私が一番戸惑ってるんだ。私を簡単に包み込むほどの広い胸を持ってるのに、小さく震える、仔犬のような。翔梧が。愛しくてたまらない。頭上から、小さなため息が聞こえた。

「……ゴメン。信じる」

 小さなビニール傘の下、翔梧が私の背中に片手を回して力強く抱いた。

「俺も、沙耶を信じる」

 その囁きが耳に届いたとき、思いがけなく、胸を打たれてココロが震える。『誰かを信じることが怖い』そう言っていた彼が。私を信じようとしてくれてる。彼の言葉が、もったいないほど嬉しくて。

「ありがとう……」

 今度は幸せで泣けてきた。少しの間そうしていた後、そっとカラダを離される。