稲光が光り立ち込める暗雲。夕立。びしょ濡れになりながら、雨宿りもしないで歩き続ける。流れる涙もわからなくなるからちょうどいい。人の流れに飲み込まれながらどんどん駅へと歩いて行く。息継ぎができないくらい嗚咽を漏らしても強い雨音が隠してくれる。

 ココロが、良心が痛む。今やっと、山内さんの想いを受け止める。私は最低だ。結局、自分のことしか見てなくて。彼を、傷つけただけ。どうしようもない恋心を彼から感じた。わかる。私も同じ恋心に囚われているから。

 突然私の周りだけ雨が止んだ。足を止める。
 振り返らなくてもわかった。背中から伝わる温かい体温。傘を持つ大きな影。

 幾つもの水滴が降りかかり、濡れていく腕を見つめながら愛しくて私はまた涙を流す。