「あの、ちゃんと返事をしようと。――そう思って」 

「……うん」

 追加でコーヒーを注文したあと、座り心地の良いゆったりとした一人掛けのソファーに腰かける。少し前屈みにまっすぐこちらを見て話を聞く姿勢をとってくれる。

 上手く言葉が出てこない。何を言っても、今日私はこの人を笑顔には出来ないだろう。何度も私を元気付けてくれた、あの笑顔。

「こないだ、電話かけ直してくれたよね? 出張先に、僕がかけた時から、ずっと様子が変だと思ってた」

 何も言い出せない私を促すように、穏やかに話しかけてくれる。私は涙目で、もうこぼれ落ちそうで、必死に堪えていた。私が泣いてどうするの?

「や、山内さんの気持ちはすごく、嬉しかった。山内さんに、私、本当に救ってもらってたから。悲しい気持ちもどうしようもない寂しさも。……山内さんがいたから」

 また、言葉につまずく。いくつもの涙が、パタパタと音をたてて握りしめた拳に落ちていった。山内さんは、静かに私の拙い言葉を待ってくれる。

「けど……やっぱり、山内さんの気持ちには、私は答えられない……」