「……ありがと」

　翔梧はそう呟いて私に　そっとキスをした。唇が触れるだけの短いキス。一度触れあうともっともっと欲しくなって彼を見上げた。

「そんな物欲しそうな顔するなよ。帰れなくなる」

　言われて気づいた。恥ずかしくなって、彼の胸に顔を埋める。

「だから、そういう可愛い行動もダメなんだって……誘ってんの？」

「ち……ちがっ」

　私はただただ耳まで熱くなるばかり。いたずらっ子のように微笑む彼を見上げ軽く睨む。やっぱり私ばっかりが苦しい。


　この甘い苦しみがまだ続くという幸せにココロが痺れた。その日、本当に翔梧はそのまま帰って行ってしまったけど寂しさはあっても不安はなかった。彼が口にした『未来』と言う言葉が何よりも嬉しくて……。

離れてる間、何度も何度も反芻するだろう。彼がくれた言葉たちを。