会社に歩いていく沙耶を、姿が見えなくなるまで見送った。その真っ直ぐな姿勢を見てると自分が本当に子供だと思う。
 高二ともなるとそろそろ真面目に進路を考え始める時期で、三者面談や進路相談。模試もあるし、夏休みでも塾なんかでは宿題やテストの連続。それでもまだ、遊ぶ余裕はある。時間も社会人のようにしっかりしばられてない。自分の意思ではなく、親や先生、他人の考えで動いてるようなもんだ

――七つ

 大した差じゃない。
 でも、沙耶を想えば想うほど重く感じる。
 余裕がなくなる。俺は子供だ。

『大人の男』

 そのイメージに、ふと、あの男の顔が浮かんだ。
 あの夜沙耶と手を繋いでいた男
 俺が沙耶を避けてた間、きっと一緒にいたであろう男

 さっきまでの幸せな気持ちがぐらぐら揺れて、腹の奥からぐつぐつと煮えてきて黒くトグロを巻く。この気持ちを知ってる。あの夜、俺を壊した気持ち。今思えば、俺はあの時『嫉妬』に狂っていたんだ。

 あの時はわからなかった。
 初めて生まれた自分の気持ちから、沙耶から。逃げだして、寄ってくる女たちを次々に喰っていった。今まで相手にしなかった女たちともヤりまくって、ただ腰を振って出すだけの、何の意味もない行為を繰り返した。