翌朝。すっかり昇りきった太陽と小鳥の囀ずりで目が覚めた。今日は午後からの出勤。寝惚けながら見上げると、鼻先をくすぐる淡く朝日に光る髪。長く濃いカールの効いた睫毛。つまようじならいくつでも、なんなら鉛筆も乗りそうだ。
 
 思わず見とれるほど整った安心しきって眠る王子様がそこにいた。その胸にもう一度顔を埋め直す。乾いた汗の匂い。翔梧の匂い。しばらくくっついていると、二人の体温で熱くなる。喉の乾きを感じてそっとカラダを起こしベッドから立ち上がる。

「……ん」

 翔梧が薄く目を開いた。

「あ、ごめん。起こしちゃった?」

「……どこ行くの?」

 答える前に、伸びてきた腕に絡め取られて腕の中へ。きつく閉じ込められて息が出来ない。

「――苦しいよ」 

 そう言いながら、胸に広がる甘い幸せ。

「このまま……」

「え?」

「このまま溶け合えればいいのに」

「翔……梧?」

 顔は見えないけど、その口調と言葉が胸を打った。切なくなるような漠然とした不安や寂しさを感じる。
  
「私はここにいるよ」

 ぎゅっと翔梧の広い温かい背中に手を回して言う。そして自分にも言い聞かせる。翔梧は、ここにいる。