「私も、怖いよ」

 人を好きになると、弱い、醜い自分が顔を出す。そんな自分と向き合うのも、欠点だらけの自分を認めるのも。 

「私も。いつも逃げてばっかり」

 傷つくのが嫌で、相手と向き合う前にいつも中途半端に逃げ出してた。

「今だって……」

――それでも。
 ゆっくりと顔を上げて見つめる彼にもう一度伝える。

「私はそれでも……翔梧が好きだよ」

 今の私の精一杯の本当の気持ち。今も弱い。
 また自信をなくして、逃げ出したくなるかもしれない。でも、この気持ちは、嘘はじゃないから。

 次の瞬間に唇を塞がれていた。

 二人の、唇を重ねる音だけが静かな部屋に響いてる。角度を変えて、浅く、深く。何度も何度も、唇を求める。さっきのキスとは全然違う。激しくも優しい、想いがこもっていて、言葉より、胸が詰まった。