「――何?」

 少し声が震えてしまった。それがまた恥ずかしくて前を向いたまま答える。

「……俺のこと好きって、ホント?」

 耳元で低くそう囁く。その艶っぽい声に肌が粟立つ。
 私だけもう一度言わせるなんて、ずるい。

「翔梧は?……本当?」

 意地悪な気持ちになって、逆に聞き返してみる。黙り込む翔梧の表情を伺うと、気難しい顔をして、ココロ無しか顔が赤らんでるように見えた。

「あ、こっち見るなよ」

 ものすごく新鮮な照れように、私まで恥ずかしくなってしまう。翔梧の赤い顔なんて見たのは初めて。

 私を口説いた夜も。関係を持っていた数ヶ月の間も。高二とは思えないくらい女の扱いに慣れてて、常に余裕で、なんの執着も感じなくて。
 唯一、余裕が無いように見えた最後の夜も、もちろんこんな表情はしなかった。

「マジで、今、悪いけど余裕ないんだ」

 蛇口を捻って水を止めて私の手を包み込むように握る。