空は夕日に包まれてひぐらしが鳴き始めてる。辺りからは夕飯の匂いが漂いだす。そんな日常の中で私たちの周りだけが非現実的な甘く濃く切ない空気が流れていた。

「――翔梧?」

 たっぷり時間がたってから声をかける。言葉を無くし、大きなカラダを私に預け支えられるように抱き締められている。彼が愛しかった。

 そして耳元に
 小さく囁くような
 声が届く。

「沙耶……好きだ」

 その言葉は
 ストンと
 私の中に落ちていった。