「さっきの、電話の山内さんのこと……翔梧少し誤解してる。初めて会ったのは、翔梧が出てったあの日だし、みんなで飲んでたの。それから、駅まで送ってくれただけ」

 まずは、きちんと話したかった。息を整えて話し出す。

「手までつないで?」

「あれは……」

 大きな瞳がはっきりとわたしを睨み付け、腕を離した。

「……もういいよ。なんであれ今は付き合ってるんだろ?」

 諦めたような唸るように低い呟き。傷ついた子供のように投げやりに言い捨てていく。背を向けられ歩き出す背中に叫ぶ。――逃げないで!

「でも、付き合ってないの。凄く、いい人なのに。ずっと好きだって言ってくれてるのに。どうしても答えられなくて――」

 答えられなくて苦しかった。山内さんの気持ちは痛いほど理解できてたから。好きで大切で想いが募りすぎると人は臆病になって、弱くなる。一人が怖くなる。私がそうだったから。そんな私を救ってくれた、大切な人。

――失いたくはない。でも……。
 

 どんなに残酷でも。
 身勝手でも、
 自分のココロには嘘はつけない。

 私は……。