「あっちーな」
 そんな空気を変えるように、Tシャツの首もとを伸ばす。確かに翔梧のシャツの背中も汗で色が変わってる。

 部屋で涼んで行く?

 以前のように気軽に言えない。でも、ここまでわざわざ送ってくれたんだし……。口実を考えながら口を開いた時、鞄から携帯の着信音が響いた。私のだ。片手で鞄から携帯を取り出す。

〈着信中:山内 柾〉

 画面を確認すると、ドキッと心臓が揺れた。

 前に会った時、着いたら連絡するって話してたことを思い出す。山内さんはいつも、こう言うことに豆なのだ。

――でも、今じゃなくてもいいのに。

 そんな山内さんに初めて苛立っている。身勝手な自分を自覚する。