新幹線のホームに向かう時には、もう翔梧は切符を買った後だった。
――本当に見送ってくれるつもりなの?。
 乗り場の列にスーツケースを持って先に並んでいる翔梧の後ろにつく。新幹線の到着時間までは、もう少し。

 澄ました顔で立ってる翔梧は何も言わない。

 何か、話さなきゃ……。そう思うのに、聞きたいこと、言いたいことは山ほどあるのに。どこかしら張り詰めた雰囲気があって、簡単に言葉に出来なかった。目の前、数十センチ先にいる。重い荷物を持って移動した彼から感じる、汗、蒸発していく体温。そこにいるんだ。会いたくて堪らなかった、もう無理だと諦めていた、彼が。それがとにかく信じられないでいた。