初めてあった日から、山内さんはずっと私のペースに合わせてくれていた。そしてそれに甘えていた。

 ずっと、知っていた山内さんの気持ちを。

 いつも、その言葉の端にその行動にその空気に確かに含んでいたその想い。山内さんの優しさにつけ込んでずっと見て見ぬふりをしてた。私はそんな、ずるい女……なのに。

「君が誰を好きでも、それを含めて全部好きだよ」

「私……私にはそんな、そんな風に言ってもらえるような人間じゃ」

 この世の何もかもを許すような微笑み。

「だから、それも含めてだよ」

 カウンターの隣の席で、少しネクタイを緩めた山内さんが目を細めて私を見る。

 こんなに慈悲深い。その愛情に、ぐらぐら揺れる足元。
まっすぐで直球な彼の気持ちに目眩がした。私の中を全て見透かされているようで、頬が熱くなった。