時間が遅いせいもあるけど、いつもより落ち着いたバーでいつもの笑顔が少ないのが気になった。

「なんかあったんですか?」

 つい、そう聞いてしまうほど。

「いつもと全然雰囲気違いますよ」

 そう言うとやっと笑った。いつもの柔らかい笑顔にホッとした。

「沙耶ちゃんには敵わないな」

 一緒に笑った後だったから、

「沙耶ちゃんが、好きだよ」

 心臓の奥まで届いた。その綺麗な形の眉の下の優しい瞳で、なんとも言えない甘く濃い空気を纏って紡ぐ言葉。

「あ……の」

 私の心臓は突然の出来事に大きな音をたてていた。