「キミの分のドリンク頼んでたのに、どっか行っちゃうから、焦ったよ」

 あの注文は私の分だったんだ……。言われるまでまったく気づかなかった。

「それとも、さっきの人達と約束してたとか?邪魔したかな?」

 問いかけられてやっと、整った顔に、唇の動きに目を奪われて言葉を失っていた事に気がついた。大袈裟な程首を振り再びお礼を繰り返す。

「ドリンク、なかなかうまく頼めなくて困ってたの。それにさっきの人たちも強引で怖かったから……すごく助かりました。本当にありがとう、ございます」

 取って付けるように敬語を付け足す。