とりあえず目の前のグラスを受けとり、ゆっくり振り返る。見上げるとさっきの見とれていた顔がそこにあった。

――え……。
 言葉にならない驚きで口は開いたまま。

「可愛いな、声、無くしちゃったの?」

 少し厚めの唇からからかうような笑い声がこぼれている。可愛いって……。すぐに熱くなる頬。さっきの二人にも言われた言葉なのに、まったく違う響きを持って耳に届いた。からかわれてるだけだってわかっていても、その何もかもの警戒心を取り除くような笑顔で言うのは反則だ。

「あ、ありがとう」

 そんな動揺を気づかれたくなくて、誤魔化すように短くお礼を口にする。