「肉と魚、どっちがいい?」
「じゃあ、肉で」
「お、気が合うね。いい店知ってる。美味いよ、きっと沙耶ちゃん気に入る」
ハンドルを握りながら楽し気に笑う。
「わ、楽しみ!」
山内さんの、カラッとした笑い方が好きだった。私はこの人の笑顔に救われている。
表向きは、翔梧と出会う前と変わらない毎日を送っていた。
それでも一日に何度も携帯を確認する。メールの受信履歴も消せないまま。
彼はきっと古ぼけたおもちゃに飽きたんだ。今頃もっと綺麗で新しい相手ができてるはず。そう何度も何度も自分に言い聞かせていた。
山内さんは、そんな私をたまにこうしてご飯や映画に誘ってくれた。そして、あの夜のことは、触れないでいてくれている。まるで、傷ついた小鳥を包むように、ただ優しくそっと寄り添うように側にいてくれる。
そんな山内さんの大人な優しさに甘えていた。