腕時計は七時半過ぎ。約束の時間は七時十五分。

――またやっちゃった。

 ビルを出るとむんっと夏の夜の匂い。太陽の姿はビルに隠れてるけどまだ空は明るく、昼の熱気がしっかり残っている。クーラの効いたビルの中では分からないけど、今日も暑かったに違いない。

 ロータリーへと早歩きする。停まっている一台の車を覗き込んだ。開いた窓からひんやりとした風がもれてくる。

「遅れてごめんなさい……」

「お疲れ様。大丈夫、全然待ってないよ」

 さっぱりとした整った顔が笑うとくしゃっと崩れる、
 山内さんの笑顔。相変わらず癒し系だ。

「どこいこうかお腹空いてる?」

「ペコペコです」

「ははっ、じゃあ今日はがっつり系でいこう!」

 ゆっくりと車が走り出す。