この世界には100万に1の確率で、『死神』と呼ばれる生命が生まれる。

周囲の人間の生命エネルギーを無意識に喰いとる力をもったそれは、魔力や知力、身体能力に優れる者が多く、

国からは重宝される存在であったが、民の間では生まれおちると同時に殺されることもあった。

魂の持つエネルギーに関する研究は、各国で進められてはいるものの、まだまだ未知の領域である。


しかし、死神が他人の魂を喰って、自らの力に変換していることは紛れもない事実。

希有な存在であるがゆえに、彼らをまるで逸話の中の登場人物のように認識しているものも多かったが…彼らは確かに存在していた。



宿に入りチェックインをして、2つの部屋をとった。

ストークとボルグ、カノーとカロンが一緒の部屋に入る。


今では当然の組み合わせとなっていたが、ボルグ曰く、大公様直々に二手に分かれる際のペアを、ご指名いただいたのだという。

感情的なストークと気ままなカノーにはお目付け役が必要とのことで、4人で行動するときはこの組み合わせにとのことだが…

カロンは密かに、大公様まで自分のことを子供とみているのかと落胆していた。


(自分も男なのですが…女性と同じ部屋とは、、、、まぁ、役得と思いましょうかね)


「何か言った?カロちゃん」


視線に感づいたのか、カノーが振り向く。


「いいえ、なんにも」


ふふふと、笑うカロンに「変なコねん」とカノーはやわらかく微笑みを返した。


美しい銀髪の持ち主である彼女、淡い輝きが彼女の魅惑的な美貌によく似合っている。

髪の色も、自分の顔も大キライという彼女を間近で拝めるのは自分だけ。

種族に違いはあれど、美醜の感覚はズレていない。


(残念なのは、僕が机に座らなければ彼女の顔の高さにならないということだな)


長身にグラマラスな体型を維持している彼女が街を闊歩すれば、羨望の眼差しが集中するのは至極当然であるのだが、

彼女は常に顔を隠し、その美貌を世間の喧騒と隔ててしまう。

今も甲冑を脱ぎ捨てたのは束の間、すぐにローブに袖を通し、すっぽりとフードをかぶってしまった。