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「…ん?目が覚めたかストーク、私が分かるか?」


ふいに降ってきた、聞き覚えのある声。


「この世の全て、どんな病気も、お前を侵すことはできない…知らなかったか?」


クスッと笑い声がした。虚ろに開いた瞳の上に、すっと手がかざされる。



「ほら、お前の方がずっと強いんだから」



「……!」



身体の痛みが消えた。

バッと身を起こすと、やはりそこには予想通りの人物がカラカラと笑っていた。



「よくやった、お前の選択は全て正しかった。新たに病魔に侵される者はもう出ない。魔が身体から抜けていけば持ち直す者も出てくるだろう」



「た、大公さま!!なぜ――」



「オレ以外が来たのでは役に立たんだろう?もう大丈夫だな」



スッと鏡面加工の腕輪を目の前に差し出された。

鏡の向こうの自分はいつもと同じ、空色の瞳をしていた。



「…あと、『大公様』はよせ。今は2人しかいない、ストーク」


「あ、そっか。じゃ、お言葉に甘えて」


「いつもやりがいのありすぎる仕事を与えてすまんな、お前たち以外に適任がいない。いつもさ。」



大公がお手上げだという風に肩をすくめた。


「国のためには仕方ない、いくらでも使ってくれていいよ」


「無論、そのつもりだ。闇の軍勢の力が増している…トレディアとやらは鉱石の姿をしていたがおそらく…」


「…うん、上級魔族(スペクタクルズ)だったんだ、きっと。すんごい結界に、下級魔族をわんさか召喚してくれたよ」