空色のはずの青年の瞳が――黒い。

黒死病の末期症状―。


「――…なぜ言わなかった」


「ごめんな、兄貴、でも、務めは果たすから」


か弱く微笑む。


「なっ、ストークさんを置いて行くなんて!嫌です、僕は残ります!」


動揺を隠せず声を張り上げるカロンに、ストークは背中で答えた。


「…もう、立ってるのも辛いんだ」


「それならば尚更…!ストークさん一緒に帰りましょう…!!」


なんとか青年と目を合わせようと青年に駆け寄る。


「カロちゃんッ!!」


カノーの怒声と同時に、カロンの前に炎が走った。


「…カノー、頼む」


炎に足を止めたカロンを、カノーがひょいと脇に抱きかかえた。


「……行くわよ、カロちゃん」


「やだっ、ストークさんっいやだあっ」


ボロボロとその身体に似つかない大粒の涙をながし、ジタバタと暴れる。

カノーの腕は揺るがない。


「さ…っき、さっき、約束したばっかりなのにっ…!」


「急げ、空間がすでに崩れかかっている!


「ストークさんっ―――」


悲鳴にも近い、叫びは途中で途切れた。

カノーとカロンの姿は暗い空間の「穴」にかき消えた。

最後尾のボルグが続く。