「……ぇほっ、……っはぁ~…。だいじょぶカロちゃん?」


「………まさか、味方を巻き込んでくるとは思いませんでしたね。おかげで雑魚は吹っ飛びましたが」


爆風の余波に、砂煙が舞いあがり薄く靄がかかる。

カノ―は膝をつき、カロンがその小さな全身で彼女を守る盾となった。

魔力に帯びた身体は薄い金色に輝き、砂煙の向こう側を見つめる。


『 もしかして 死神 …? 』


幼い、声がした。


もやの先にいるのは、人の形をした黒い炎。

いや、それは炎なのか…ゆらめく暗闇、…中心から声がする。


『 …にいちゃ…ん、 来たの …? 』


…ヴン…と低い音がした。


「…!まずい、また新手を呼ぶ気です…!!」


黒い炎の周りの空間に魔方陣が次々と出現し、くるくると回り始めた。


「……このぉっ!」


苦々しげな表情でカノ―が大鎌を振り下ろす。

瞬時に、魔力の刃が黒い炎を両断した……しかし炎の境目はすぐにつながり再度燃え上がる。


「んもう!何なのよぉ、コイツは!!」


「カノー、間に合わない。来ますよ!」


魔方陣から異形の生物たちが這い出す、それぞれに呻き声をあげ…黒い炎を守るように壁のように立ち並ぶ。


「カロちゃん、兄貴とあのコは!?」


「………気配がしません。結界か何かに、囚われたのか…」


カロンの頬にヒヤリとした汗がつたう。

カロンの緊張を吹き飛ばすかのように、カノーが高らかに声をあげた。


「ホシェン・リングッ!!」


カノーが放った魔力の刃に黒い炎は動じなかった。

刃は弧を描きながら、黒い炎には触れずブーメランのようにカノーを中心に空間を走り抜けた。


カシャン


何かが小さく割れる音がした。


「うふ、我らが前衛(アタッカー)の登場です」


にこぉっとほほ笑むカロン。

先ほどまで存在しなかった気配が二つ、現れた。


黒い炎がその頭を新たに現れた二人に向けた。

『……身体が大きい人はキライ。僕を虐めに来たの…?』