カロンはわずかに身体を地から浮かせつつ、まるでフェアリーのように軽やかに攻撃をかいくぐり、人形どもの首を落としていく。


攻撃力では圧倒的に死神が勝っている、しかしここにきて終わりの見えぬ膠着(こうちゃく)状態へ突入していた。


「……ったく、次から次へと」


数が多すぎる…カノ―がだんだんと苛立ち始めた。



「カノ―!はやらないで、中心に近い証拠です、数は無限ではない」


「いいから!カロちゃん突破するわよぉん…!」



カロンの忠告を無視(シカト)して、カノ―が鎌を大きく薙いで回りの人形を吹っ飛ばした。


くるくると頭上で鎌を回すカノ―。



「カロちゃん、近くに」



カノ―の声に、頷くカロン。

瞳をつぶり、その姿が消えたと思った瞬間。カロンはカノーの隣に現れた。魔法による瞬間移動だった。



「…ホシェン・リング(裁きの輪)」



呟いた声が、かすかに聞こえた。

カノ―を中心に光のサークルが出来上がる。



「………とっておき、よん」



カノーが片手に持ち替えた大鎌を頭上で水平にスゥっと、一回転させた。


―――瞬間、血のように赤い光が視界を埋め尽くす。


否、血の『ように』ではなく、血そのものであった。

カノ―らの頭上のサークルより外側の人形が何かに切り刻まれていく。

どす黒い血が光の壁に飛び散った。



「雑魚のくせに出しゃばるからよん」



白い肌に玉の汗が浮かんでいる。



カノ―の愛鎌は、名をアドレイクという。

主を選ぶ刃として長らくジャド公国に封印されてきた、意思の宿ったそれは持ち主の意を汲みとり『気』の刃を飛ばす。

主であるカノ―ならではの見事な操り様だったが、大技を繰り出したあとの消耗は激しい。