一方、カロンとカノ―は、束になって襲いかかる魔族たちを振り切ろうと狭く暗い坑道を走り続けていた。


「…ったく、しつこい奴らねん」


中心に近づいたためか、魔族どもの質も変わってきていた。

今彼らを追いかけるのは、人型をした筋肉組織を丸出しにした魔族である。

口は耳元まで裂け、明らかに人ではないと分かるおびただしい数の牙が生えそろっていた。

入り口寄りの敵は全て自我を持たない下級魔族であったが…この人形(ひとがた)は違った。

様子を窺うようにカノ―と距離をとり、さらにカロンの放つ魔力でも決定的なダメージを与えることができない。


「魔力はあまり効かないタイプですね…」


カロンが地に手をつき、呪いと唱えると人形の足元から岩が突き出した。


ガシュッ


何匹かの人形が串刺しになり手足をバタつかせる。


「数が多い…、一掃できないのが辛いですね」


最後尾の見えない人形ども。

前衛のカノ―との距離を測るようにジリジリと包囲を固め、こちらの様子を窺っている。


「カノ―!前にも!」


「!」


一本道、前と後ろを挟まれる。


「くっ、時間がないというのに!」


カノ―が鎌を振りかざし、正面の敵に斬り込んだ。

カノ―が背を見せた途端、逆側の人形がなだれ込んでくる。


シャッ


人形の身体が斜めにずれ落ちた。


「すみませんねぇ、僕も武器を使えない訳ではありませんので」


カロンも背に差していた大鎌を抜き、凛と構えた。