一方、ミアとジェイドは、入り口を守っていた。


すでに日は暮れ、ミアの額には玉の汗がいくつも浮かんでいた。


静けさをたもつ鉱山の入り口、その入り口とだぶってミアの前にもう一つの『入り口』がゆらいでいる。


穴を閉じようとする大きな力を、無理矢理こじ開け、『入り口』…彼らの『出口』を保つ。

ミアの集中は切れることはなかった。


しかし、この時間のかかりよう。『中』で何かがあったことは容易に想像できた。

きゅっと唇を噛みしめたミアは、確かに焦りを感じていた。

まだ大丈夫。しかし、いつまでもこの状態ではいられない。


(持って生まれた才能は何のためだミア・マイン…!考えなければ、私にできる最善策を…!)


その時、黒髪の少年がミアの視界に入った。

息を切らしはじめたミアに、水を汲んで来たのだ。


(…この子は訓練を積んでいない…しかし『死神』!潜在的な力が少なからず、必ず眠っているはず…!)


「……ジェイド、いっしょにこのロッドをにぎってもらえる?」


「お、俺でいいんでしょうか。俺には魔力の心得なんて……」


「……私が、引き出す…。ロッドに意識を集中してくれさえばいい……」


無事に彼らが戻ったとき…、あの子を抱きしめてあげる余力くらい、残しておきたい…。

ミアの小さな、心の中の呟きを、今はだれも知ることはない。


「あなたが『死神』だから頼んでいることです、苦しくなればすぐに腕を離しなさい」


ジェイドの小さな手がロッドに乗った。


「……っ……これっ…!」


指先がロッドに触れた瞬間ひどい脱力感に襲われた。


「集中を、ジェイド」


「ぐっ……は…い…っ」


確かにジェイドに魔力の心得、教養はない。

しかしながら持って生まれた精神力は、人並みではない。

ミアは確かな手ごたえを感じていた。