ミアと連絡を取るのはストークには困難ではなかったようだ。

2時間程で戻ってきたストークの後ろからはミアが軽い会釈とともに続いた。

手には青い鉱石のはまったロッドを持っていた。


「そ、それ―――」


いち早く言葉を発したのはカロン。

視線はミアの手に握られているロッドへ向けられている。


「………。非常事態ですものねぇ」


うふ、とカロンは可愛く笑ってごまかすが、このロッドもこの国ではかなり名が知れた魔具に違いない…。

口に出すのもはばかられる、相当の代物なのだろう。

カロンの態度にカノーも何かを察したようだった。

感嘆と呆れの入り混じった表情を見せる。

この女の登場には、何かしら自分たちでさえ驚く何かが付いてくる…。

いちいち驚いてやるのはしゃくにさわる、波立つ気持ちを抑え、口をつぐむ。


「…皆さん、私は今、王宮の私室へ籠っていることになっております。ご協力くださいませね」


皇太子妃に背もたれのあるイスに導くジェイド。


「ありがとう」


「あ、いえ!」


さすがに王族と会話をする機会は死神であれどなかなかあるものではないらしい。

ジェイドはぎくしゃくとした笑みを浮かべ動悸を抑えようと胸に手をあてる。


「……キャストがそろったようだ。配役を教えてくれ」


促す巨体。頷く青年。


「役割分担を言うよ。まず結界の突破口を作る、これは神官クラスの魔力を持つ者数人が適任だ。」


魔力と聞いて、カロン、ミアが顔を上げた。


「数人?神官がこの国に何人も居るとは思えないけどん?」


「…数人が適任だけど、突破口を開くのはミア一人でやってもらう」


ボルグたちは知らなかったが、ミアもこの国の有する神官の位持つ一人であった。

持っていないのは武力だけ。彼女の言葉にウソはない。


「ふふ…ということは、その役目が一番『安全』ってことねん?」


カノ―が問うと、ストークが頷く。

他はさらに苦しい任務になる、そういうことだ。