「オレに向かってアイツが話しかけて……いや、なんでもない」


「なに?ちゃんと言いなさいねん」


ニコニコと笑いながら、ジェイドの細い首を鷲掴みするカノー。


彼女の腕力は、子供の首など一瞬でへし折ってしまう程のものである。


「…っ!うぐぐ…やめ…別に大した…ことじゃ」


「さっさと言いなさい、大したことかどうかは私が判断してあげる」


笑ってはいるが目が笑っていない。


「…だから夢だって!訳わかんねーよ、『兄ちゃん、僕じゃない』ってそんだけだっ…!」


「…ふぅん」


カノーが力を緩めて、ジェイドは解放される。とすんと軽い音をたてて、床にしりもちをついた。


「…どういうことかな」


ストークがつぶやくと、カロンも首をかしげる。


「うーん、オニキスがこの状況を引き起こしているというのが濃厚ですが…『僕じゃない』ですか」


「本当にただの夢かもしれないわよん」


けほっと首元を抑えたままのジェイドが小さく呟く。


「ぐぅ…初めて会ったお仲間だが、感動が湧いてこないぞ…」


ボルグが無言で、床にしりもちをついた少年に手を差し出した。

ジェイドがその手を握り、身を起こす。


「アンタがこいつらのボスかい?躾がなってないぜ…。俺の話に納得いったなら、話をすすめようぜ?」


ゆっくりとボルグが答える。


「…納得がいったわけではない。今聞いたような、危ない実験はしたことがないのでな。」


「ちっ、アンタも食えん男だということだな?」


ふてくされたように頬をふくらますジェイド。、…子供らしい仕草にボルグがふっと笑った。


「とりあえず言い分は分かった。しばらくお前には一緒に行動してもらうぞ」