ぐ…うぁ……
痛ぇ……っ痛ぇよぉ……
部屋中に響き渡る悲鳴が、すべての物音を遮断していた。
「殺せっ!!オレを殺して…っ!」
陽の光も届ききらぬ薄暗い部屋の中、簡素なベッドの上で男がハねていた。
「頑張れ!!これ飲んで…少しは痛みが和らぐはずだから…」
その腕をしっかりと両手で包みこみ、真摯に看病を続けるのは小綺麗な顔に似合わぬ大剣を背負う、若い男である。
コクンと喉を鳴らし、ベッドにへばりついた病人が言った。
「………なぁ、となりのコが泣いてる。そっちに行ってやってくれ…」
自分は大丈夫だとは言わない、皆、わかっていた。
今、この国で急速に広まっている死病。
感染すれば苦しんで死ぬ、それだけ。
末期症状に瞳が黒く変色することから【黒死病】と呼ばれた。
「…頑張って。生きることをあきらめないで…お願いします」
病人の汗を拭きとり、男は外へ出た。
本当だ、女の子が泣いている。行ってあげないと…