両手をめいっぱい広げて少年の前に立つストークと、動じないボルグ、詰め寄るカノー。

そしてついに愛鎌の柄に手をかけたカノーを見て、カロンが少年に耳打ちした。


「………オニキスくん、このお姉さんが本気なのは肌で感じてますね?おとなしく従った方が良いですよ…」


………ぷっ、ふふ、あはははは…! ………

少年が我慢できないといった風に吹きだす。怯えるどころか信じられない言葉を紡ぎだす。


「なんだアンタら!本当にあの大国から来た使者さまなのかい?!それともなんだ、死神ってのはやっぱり個性が強いのか!あははは!」


無言無音、一瞬でカノーが少年の喉元に鎌をあてがった。


「おっと、止めておいてくれ。お互い希少な存在だろ?」


「!」


ふいに少年が、喉元にあてられた、鎌の刃をその小さな手で押しやった。


ポタ…


カノーも反応し、少年の手が落ちないように鎌を引いたが少し遅かった。手のひらは深く切れ、血がしたたる…。


「………どういうことよ、アンタ…」


血は流れた、しかし、傷が……かざされた手のひらから、傷が消えてゆく。

代わりに花瓶に生けてあった花が急速に萎れていく。

「ちゃんと話したい、もう一度席についていただけるかな?」


「アンタたち兄弟は二人揃って死神だったわけ!?」


100万に1の確率という出生率、カノーがあり得ないという顔をして少年を見る。


「違う、死神は俺だけ―――…死神は兄のジェイド、そうお国の資料には書いてなかったかい?」


話せば話すほど少年の姿に違和感を覚えていた、それは確か。


「俺はオニキスじゃない、死んだジェイドの方さ」


カロンは眉をしかめ、静かに首をふる。


「……兄の方は24歳。あなたの姿はありえない…!」