「いやいや、気持ちは分かるしな」


どこか子供らしくない、上から目線の言い方に聞こえた。

…しかしストークはそんなことは気にもならなかったらしい。「ありがとう」と小さく笑みを返した。


「…伝染病がはやってるんだ、早くドアを閉めてくれ。聞きたいことがあるんだろう?」


オニキスがそう言いながらイスをずりずりと引きずってくる。どうやら自分たちを追い返すつもりはないようだ。

人数分のイスを用意して、ストーク達に座るように促した。

オニキスは一つだけ背もたれのあるイスを陣取り、深くもたれた。正面のイスにストーク、少年の左隣りにカロン、ボルグは立ったまま壁にもたれた。


「‥‥我々は、今回の伝染病と『トレディア』の関係性について調べている」


ボルグが低く…(声も目線も)語りかけると、少年は腕組みをしながらフンフンと頷いた。


「それでアンタたちは?随分物々しい格好をしているじゃねぇか」


「我々はジュド大公より今回の件で偵察に来ている」


ボルグがさらりと答える。


「そっか、それで?その鎧、黒鉄だろ。アンタたちは死神じゃねぇのかよ」


「そうよん、貴方のお兄さんとおんなじねぇ」


ボルグの代わりにカノーが答えた。カノーは艶やかな笑みを浮かべ、切れ長の目を煌めかせる。可愛い少年は大好物だ。

さしてカノーには関心を寄せずオニキスがつぶやく。


「話してる途中で割りこんでくるんじゃねぇよ」


「………あらん、くそ生意気なガキねん…」


笑ってはいるが、すでにキレている。瞳は金から銀へ、その奥は冷えきり、今にも背中の鎌に手が伸びそうだ。


「アンタはこちらの質問に答えるだけでいいの、私語は厳禁よん?分かったかしらん」


「カノー!!まてまて!気が短すぎるだろお前!!」


慌てるストークをボルグが遮った。


「――カノーに任せた方が話が早いか。オニキス、素直に情報を提供してくれれば報酬を渡そう。質問に答えてくれるな?」


「兄貴まで!」