ストークはミアを大統領区へ送り届け、その間に3人は資料に目を通す。


「…『武力』が必要なほど、凶暴な相手なのかしらね?」


「…さあな」


語弊があった、這いつくばるように資料に目を通しているのはカロンだけである。

カノーとボルグの二人は最初から作業に参加する気はないようだ。


「カロちゃん、翡翠(ジェイド)くんはそんなに凶暴なコなのん?」


「………カノー、ちょっとは手伝うとか――」


「お前の得意分野だ、任せた方がはやい」


文句を言いかけた口は、上から降ってきた言葉にふさがれる。


「・・・・はい師匠」


心の中でカロンは溜息をつき、気をとりなおす。


「兄の名前はジェイド、弟の名前がオニキス。ここ鉱山区に2人で暮らしていたようですね」


「暮らして、いた?」


「はい、兄は鉱山の落盤事故で死んでます」


「………」


話が続かないではないかと、カノーとボルグが目を合わせる。


「――どういうこと?」


「……兄のジェイドが死んだのは採掘場だったようです、そこで発見された新種の魔鉱石……『トレディア』」


「新たな魔鉱石……名前から察するに、何かを入れ替える、、、Trade(トレード)する鉱石、か?」


小さくカロンが首を振る。


「詳細は不明です。トレディアはまだ採掘途中だったためにほとんど研究されてなかったとありますね……兄のジェイドは魔鉱石の力の解析の中心人物だったようで、名付けたのもジェイド自身とのことです」


「『トレディア』は今はどこに?」


「兄ジェイドの遺体と供に行方不明、とありますねぇ…」


行方知れずのトレディアは、謎が深まるなかの今回の騒動で、政府には忘れ去られている状態らしい。