3人はさほど待たされることは無かった。軽いノックの音がして、ギィっと木のドアが軋む。

隙間がストークが顔を覗かせた。


「お待たせ、連れてきたよ。……ミア、入って」


青年の肩越しに金髪の頭が見えた。

小柄な女性である。緑を基調とした落ち着いた佇まい、大きめのパッチワークがとても可愛い。

腰もとの帯には古代文字が刺繍されていた。


「………ストーク、こちらの方が我々に会わせたい人物なのか?」


女性の首飾りには動物の牙やら爪やらが、じゃらりと連なっている。


「……っ、すっごいクマねぇん」


白い肌に長いまつ毛、青い瞳、首は容易に手折れてしまいそうなくらいに細い。

かなりの美形であることは疑い無いが、目の下にはひどい隈ができている。


「……まさか、この女性は…」


カロンだけが神妙な面持ちで、記憶を探るように女を見ていた。

カロン以外の二人は、俗に言う『引いている』状態である。


「……初めまして、ミア・マインです」


女性は深々と頭を下げた。

カロンはその名に聞き覚えがあったようだ。


「ストークさん…、タイリスの皇太子妃をこんな隔離区域に連れてくるなんて…、国に知れたらただごとではすみませんよ」


「なっ…!」


カノーの顔色がスッと青ざめる。

無口な巨体も少しだけみじろいだ。


「大丈夫さ、ミアは自分から協力を申し出てくれたんだから」


しれっとした顔をして青年が答えた。


「…ミア・マインと言えば黒鉄の研究を進めた第一人者、タイリス最高の錬金術師として名を馳せています」


カロンがタイリスを知らない縁浅い2人に説明をする。