「あ。もしもし!」
「おお。久しぶりだな。どうしたの?」
「あのさ!3年間俺とずっと同じクラスで、同じ名字だった子、今どうしてるか知ってる?」
「え?あの子なら…
…3年前に亡くなったって聞いたけど」
「え…そんな…」
僕は震える手で受話器を置き、いきなり電話が鳴った日のことを思い出していた。
「もしもし!」
「ごめんなさい。嘘ついてて。私もう死んでるのに…会えるわけないのに…」
「やっぱり…そうなんだね。でも…どうして電話を?」
それからあの子は、今までのことをすべて話してくれた。
3年前、亡くなったのは突然の事故。
卒業直後に、信号を無視して走ってきたトラックにひかれて死んだ。
「そのくらいの時期なら、僕にも連絡が来るはずじゃ?」
「あの時もお母さんに電話した。あの人には連絡しないでって」
「どうして…?」
あの子からは、思いがけない言葉が返ってきた。
「好きな人に、死に顔は見せられないから」
じゃあどうして…僕はそう思ったけれど、僕が聞く前にあの子が話してくれた。
高校時代、僕があの子を好きだったように、あの子も僕を好きだったこと。
そして、告白を受け入れ られなかったのは…自分が長く生きられないことを、知っていたから。