先生の後ろをトボトボ付いて歩く。
先生はキーケースを手に持って、付いてる鍵を上下に揺らしていた。
チャリンチャリンと鍵が重なり合う音が、静かなアパートの廊下に響く。
先生は1階の1番奥の部屋の前で止まった。
あそこが先生んちなんだ……。
唾を飲み込んだ喉がゴクリと音をたてる。
ガチャガチャとドアの鍵を開ける音がして、先生が少し離れて立っていた私の方を向いた。
「佐々木?そんなとこに突っ立ってないでこっちに来い」
「あ、うん……」
鉛のように重い足を1歩1歩前に出して先生に近づいて行く。
「はい、どうぞ?」
先生はそう言って、ドアを開けた。
タバコの匂いが鼻を掠める。
嫌でも母親と暮らしていた頃のことを思い出してしまった。



