「離して!」
そう言っても手を離さない先生。
それどころか、掴んでる手に力が入っていく。
「痛い!離してよ!」
「離さない」
「何で?だって嫌なんでしょ?迷惑なんでしょ?」
「車から降りて、何処に行くんだ?帰りたくないんだろ?」
「私が何処に行こうが、誰と一緒に一夜を過ごそうが関係ないでしょ?」
私が泣きながらそう言った後、先生は再び溜め息をついた。
そして、私の手を助手席から離すと、その手をそのまま引っ張った。
香水の爽やかな香りとタバコの匂いが鼻を掠める。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
顔を上げると、先生が優しい顔で私を見下ろしていた。
その時、先生の胸の中にいるってことに気付いて、急に胸が熱くなった。



