「佐々木、ワガママ言うなって!」
ワガママじゃないもん。
ただ、帰りたくないだけだもん。
「やだやだ」
聞き分けのない小さな子供のように私は首を左右に振りながら泣いた。
「ご主人様はいい人なんだろ?良くしてもらってるんだろ?」
「それでも……ヒクッ……いや……ヒクッ……なんだもん……」
嗚咽を吐き出しながら訴えかけるような目をして先生を見た。
先生の口から溜め息が漏れる。
「もういい!先生なんかに頼らない!」
私は助手席のドアのロックを解除してドアを開けようとした。
「待てって!」
先生が身を乗り出し、ドアを開けようとした私の手を掴んだ。



