「なぁ、佐々木?」
「ん?」
「働いてるとこってどこ?」
「えっ?」
自分の顔が強張っていくのがわかった。
「送って行くから……」
「や、やだ……」
私は首を左右に振った。
「どうして?ご主人様、心配してるぞ?」
先生の言葉に尚も首を左右に振る。
心配なんかしてないよ……。
私のことなんか……。
あの女がいるとこになんかいたくない。
あの女が甘えたりイチャイチャしたりするとこなんか見たくない。
「やだ……帰りたくない……。今日は帰りたくないの……」
乾いていた涙が再び溢れだし、視界を歪ませる。
ポタポタと落ちていく涙。
唇を噛み締め、先生を見る。
困ったような笑みを浮かべ、私を見る先生。
やっぱり……やっぱり迷惑なんだ……。
何かあったら頼れって言ってたくせに、本当に頼られると迷惑なんだ。
頼れって言ったのは社交辞令だったんだ。



