キラキラした街の中を走る車。
週末の夜。
ネオンに誘われ、人々が街の中に繰り出している。
そんな景色を車の助手席の窓から見ていた。
先生からも私からも話すことはなく、車内は静かなまま。
オーディオから流れる音楽だけが車内を包んでいた。
助手席の窓が小さく開けられた。
先生の方に向くと、先生はタバコを咥えて火をつけた。
「タバコ、吸っていいか?」
なんて、火のついたタバコを指に挟んでるくせに、そんなことを聞いてくる先生におかしくてクスクス笑ってしまった。
「何で笑うんだ?」
「だって、タバコに火をつけた後に吸っていいか聞いてくるんだもん」
「あっ……」
先生は自分の指に挟まれたタバコを見て、小さく声を出した。
「もし私がダメだって言ったらどうするの?」
「ダメか?」
先生は灰皿にタバコを入れようとした。
「もしもの話だよ。別に吸っていいよ。タバコは嫌いだけど慣れてるから」
「そっか……」
先生はタバコを吸うと、運転席の小さく開けられた窓に向かって煙りを吐き出した。



